「ウキを知りたい −基本を覚えて使い分けよう−」11


第11回 ヘラウキの使い分けについて(私見)


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1.前書き

今月から2回に渡り、ウキの使い分け、エサ落ち目盛の設定など、ウキ製作者側から見たウキの使い分けについて、持論を展開していきたい。

最近のヘラウキの傾向は、用途が細分化されていることである。

特に浅ダナ釣りのウキは、ウキの性能が釣果に大きく影響することから、様々なスタイルのものが市販されている。その多くは、機能そのものを極限まで絞り込み、特定の状況下でのみ、その機能を最大限発揮できる作りとなっている。そのため、その用途にあった使い方をしないと、ウキ自体のもつ性能を引き出すことができず、釣果も伸びない。

しかしながら、多くの市販ウキはその使い方の説明がなされておらず、説明書も添付されていないことが多い。最近少しずつではあるが、使い方説明書を添えたウキが販売されて始めたことは、ユーザー側にとっては嬉しい限りである。

また、「ダンゴの底釣り」というエサにみられるように、コンセプトは底釣り用として開発されながら、浅ダナ釣りに多用されるというように、ヘラブナ釣りでは、意外な使われ方が、好釣果につながることもある。この意外性が、ベテランも含めた多くのヘラ師の心を惑わし、かつ、楽しませる要因ではないかとも思う。

ヘラ師の数×釣りスタイル=無限大のウキの仕様があると考えている。


2.基本的な考え方

ウキの役割は、ヘラのアタリをキャッチする以外に、@エサをポイントまで運ぶ、Aエサをタナまで運ぶという役割がある。

また、釣果は@ヘラの密度、Aエサの沈下速度により、大きく左右される。

特に沈下速度については、@ウキ、Aハリスの長さ、Bハリの重さ、Cエサの比重の組み合わせによって変化をつけることができるが、ウキの選択が沈下速度に最も大きく影響する。実釣においてヘラ師は、ウキを基準にして、Aハリスの長さ、Bハリの重さ、Cエサの比重 を組み合わせることにより、理想的な状態を探っていると言えよう。

逆に言えばウキの選択は、@どのタナで、Aどのような状態のエサを、Bどのように(追わせながら、馴染ませながら)釣るのかをイメージすることが重要であると考える。

以下は、@タナ、A釣り方、Bヘラの活性と密度、から割り出した、尽心作の各タイプの考え方である。


No. タナ 釣り方 尽心作のType 特徴
1-1 カッツケ なじませ釣り Type E

ハリスカッツケと呼ばれるものから、1m未満のタナを釣る場合に使用する。全長で150mm以下が目安となり、ボディは30mm〜40mmとなる。小ウキでトップとボディの付け根ですばやく立ち上がることが要求されることから、足はカーボンの足長タイプにしている。グラスソリッドは、その素材の柔らかさから、ハリスとからまることが多いので、このタイプには採用していない。なじませて釣り込むイメージであることから、パイプトップを採用している。

1-2 カッツケ 追わせ釣り Type E2 Type E との違いは、トップの材質にある。ヘラがはしゃいで、ウキが入らない場合には、ムクトップを使用し、トップの比重を利用してウキを入れる。さらに細分化すると、PCムクとグラスムクのトップのウキに分かれる。グラスムクはPCムクよりも比重が重いため、よりウキが入り易くなる。
2-1 1m 両ダンゴのなじませ釣り Type D

ハリスが張り切った直後、またその直前で食わせるような釣り方に使用する。ボディは盛期で使用することが多いため、2枚合わせでややオモリを背負うタイプにしている。へら鮒の活性と密度にあわせて、トップの長さを決定し、そのバランスで足の長さを決めている。先月号で述べたように、ウキの地域性ということで、九州を拠点とする私の場合は、トップはやや長めとなり、そのバランスで足も長くなっている。足の素材はカーボンまたは、グラスソリッドで、ウキの安定性を確保する点からも、足長タイプにしている。 なじませて釣り込むイメージであることから、パイプトップを採用している。

2-2 1m 両ダンゴの追わせ釣り Type D2 Type D との違いは、トップの材質にある。1mより上にいるヘラを引きずり込んで、なじみ切る前に食わせるような釣り方に使用する。 ムクトップを使用し、トップのストロークを有効に使用する。PCムクとグラスムクのトップに分かれるが、Type E2と同様、ヘラの活性と密度により使い分けが必要である。

2-3 1m 厳寒期のウドンセット釣り用 Type D3

ウドンのセット釣り専用で、食い渋り時に使用することが多いため、孔雀の羽根1本取りの5mm径のものとし、水の抵抗を受けにくいタイプにしている。足はカーボンまたは、グラスソリッドの足長タイプにしている。 バラケにペレットや粒ペレットといった比重の大きいダンゴを使用することが多いため、トップはType-Dよりも1ランク太い中細サイズを使用している。タナを凝縮するために、長いトップは必要ないと考えている。

3 2m前後 ペレ宙 Type B2

長竿で沖目にいる大型ベラをターゲットにしている。大型と中小型の層をわけるために、ボディは6.0mm径以上で、オモリを背負うタイプにしている。 エサに比重のあるペレットを使用するため、トップは太めにしている。従って、太いトップは表面張力の影響を大きく受けることから、これを緩和するために、足はカーボンまたは、グラスソリッドの足長タイプにしている。

4-1 チョーチン 両ダンゴのなじませ釣り Type C

チョーチンのタナで、ハリスが張り切った直後、またその直前で食わせるような、タナを凝縮した釣り方に使用する。ボディは盛期で使用することが多いため、2枚合わせでややオモリを背負うタイプにしている。足の素材は、ウキを早く立たせたい場合にはカーボン、立ち上がりをソフトにしたい場合には竹製としている。トップはダンゴが2コ支えられる太さが必要であるため、Type Dよりもやや長めとなっている。

4-2 チョーチン 両ダンゴの追わせ釣り Type C2

Type C との違いは、トップの材質にある。ヘラがはしゃいで、ウキが入らない場合には、ムクトップを使用し、トップの比重を利用してウキを入れる。さらに細分化すると、PCムクとグラスムクのトップのウキに分かれる。グラスムクはPCムクよりも比重が重いため、よりウキが入り易くなる。

5-1 底釣り なじませ釣り Type A

典型的なウキがなじんで、戻してツンのアタリをとる釣りに使用する。 ボディはうわずらないよう、一気に底までなじませますので、2枚合わせでオモリを背負うタイプにしている。 なじみ込み途中の余計なサワリをださないために、短い竹足タイプ、ウキの肩もなで肩にしている。 トップは戻りを重視するため、極細、もしくは細のパイプトップにしている。タナを凝縮するために、あまり長いトップは必要ない。

5-2 底釣り 段差の底釣り Type A2

段差の底釣りも様々なスタイルがあるが、深宙釣りの延長的に考えている。 ボディはうわずらないよう、一気に底までなじませるので、2枚合わせでオモリを背負うタイプにしている。 底釣りタイプよりも、やや立ち上がりを重視した竹製の足長タイプにしている。 トップはクワセの重さを表現できるように、極細パイプ、もしくはPCムクにしている。

5-3 底釣り ウドンの底釣り Type H

両ウドンの底釣りに使用する。 ボディは、微細な動きも表現できるように、1本取り4.5mm径で、水の抵抗を受けにくい、ツチノコタイプにしている。 足は底釣りタイプよりも、やや立ち上がりを重視したカーボン製の足長タイプにしている。 トップは微細な動きを表現できるように、グラスソリッド0.8mmもしくは0.6mmを削り出している。

3.羽根とカヤの優劣について

孔雀の羽根で製作されたウキとカヤで製作されたウキでは、どちらが優れているのであろうか。

確かに、店頭に並んだウキの価格を見ると、孔雀の羽根で製作されたウキのほうが、高額であるケースが多い。

筆者が思うに、「価格差は材料の希少価値による差であり、決して性能の差ではない。」と考えている。

羽根ウキもカヤウキもその製作工程はほとんど同じであり、ウキの製作には手間隙が必要であることは、素材が違っても変わることはないと思う。あくまで私見であるが、孔雀の羽根2枚合わせのウキのほうが手間隙がかかり、孔雀の羽根の1本取りとカヤでは、手間隙はほとんど変わらないように思う。

「カヤは余計なサワリやアタリを消してくれる。ヘラがはしゃぐような場合には、カヤウキを選択する。」、「羽根は僅かなサワリも表現する。厳寒期には、細身の孔雀の羽根の1本取りが最高。」と言うような事をベテランの方がよく口にされるが、理論的根拠については、現在研究中である。

しかしながら、様々なシーンに対応すべく、素材選びからウキを選択することは、さらに一層、私達ヘラファンを魅了する魅力のひとつになるのではないだろうか。


次回は、最終回「エサ落ち目盛の決め方」について、持論を展開していきたい。

以上

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