このコーナーでは、上塗り(仕上げ塗り)について、解説します。
ワンポイントアドバイス
(1)塗りの質問にお答えする形で
栃木県のS様から、以下のようなご質問をいただきました。
「ウレタン塗りの件で悩んでいることがありますので、お教えて下さい。
ウレタン塗りは5回塗っていますが、毎回ではないのですが、問題なのが、塗ったウレタンがカーボン足の所で固まりコブのようになることがあります。
後日、楽しみに塗ったウキを見て足にコブが出来ていると『ガックリ』とします。
例えば、5本のウキを塗っている最中に始めの頃に塗ったウキの足に液が垂れコブが出来ていれば筆にシンナーをふくませ足全体を塗り取るようにしています。
出来るコブは1ヵ所だけの時が多いのですが、何が悪いのでしょうか、出来ない時にはまったく出来ないのですが、原因がわかりません。」
(原文のまま)
これに答える形で
「私も最初のうちはよくコブができました。
原因は、筆にとる塗料の量が多いのが原因です。
従って、筆に塗料をとった後、必要最低限まで筆をしごく必要があります。
逆に筆をしごき過ぎると、塗装の途中でカスレます。
この適量にまで筆をしごく、ということを経験で身につけてください。
ウレタン塗装の際、筆にナイロン毛ではなく、豚毛の筆を使うのは、豚毛のほうが、その塗料を取る誤差をカバーしてくれるからです。
また、コブができてしまった場合には、カミソリで下地を剥がさないように注意しながらそいでいきます。
耐水ペーパーでコブを研いで平らにしようと、研ぎすぎて、他の下地部分まで傷つけてしまいます。
そこで、必要最小限、カミソリでコブを削り取るのです。」
(2)塗りの基本的考え方について
「へら専科」2005年5月「最新両ウドンの底釣りについて」において、後藤田義臣氏が、「自重が軽く浮力が大きなウキ、さらに詳しく言えば、自重の2〜2.5倍以上の浮力があるボディが必要になります。」
これは、ウキの基本性能を示すひとつの基準と考えています。
底釣り用のウキだけでなく、浅ダナ用のウキでも、自重が重く、見た目ほどオモリを背負わないウキは、ウキに対する水の抵抗(表面張力等)がオモリ負荷量より勝ってしまい、ウキの立ちが非常に悪くなります。
極端な場合には、ロッド操作をしなければ、ウキが立たず、ウキが立つまでにバラケをほどかれ、大変釣りづらい状況を生み出します。
ウキを軽く仕上げるポイントのひとつに、塗りと研ぎがあります。
私の場合、軽く仕上げたいがために、塗りは薄く、また塗った塗料を全て研いでしまうような気持ちで研ぎを行います。
「紀州のへら竿師」(渡辺紀行氏著)の第9章「初心忘れがたく・・・『至峰』」において、「『ペーパーの400番を使って津田はん糸出えへんか』と聞かれます。私は、『糸切ったらあかんけど、糸出るのがこわかったら美しく仕上がらんよ』と答えます。とくに穂先などをやたら厚く塗ったら太くするだけで、竹本来の強度を失わせてしまうよと話します。」というくだりがあります。
この話は、実にウキ作りにも通じるところがあると考えています。
塗った塗料を全て研いでしまうような研ぎを行うには、ウキの成形が完璧である必要があります。
また、素材の凹凸はあってはなりません。
このあたりの詳しい話は、『ウキを知りたい』のコーナーで改めて解説していきたいと考えています。
1)ウレタンの混合:
塗装にホコリやゴミは大敵です。塗料にホコリやゴミが混ざらないように、また、筆に塗料がよくなじむように、シンナーで筆、筆皿をよく洗います。
エンジンウレタンの混合比ですが、箱の説明書にもあるとおり、硬化剤1:主剤2の割合で混合します。
この混合比は容積比ではなく、重量比で混合しますが、少量であれば容積比で計ってもそれほど誤差はありませんが、大幅に狂うと硬化しない場合があるので、注意が必要です。
以前はティースプーンを使用していましたが、より正確な計量を行うために、注射器と使い捨てのストローを使用しています。(2009年6月16日)
エンジンウレタンの生産中止に伴い、ZEST さんのウレタンを使用しています。(2020年7月27日)
ZEST さんのウレタンの混合比は、10:1となっています。
まず、注射器と使い捨てのストローで、硬化剤を0.2cc入れます。
続いて、ストローを交換し、主剤を2.0cc入れます。
続いて、スポイドでエンジンシンナーを0.2cc入れます。
続いて、筆を使って混ぜ合わせます。この時、できるだけ気泡が入らないように混ぜ合わせます。
硬化剤0.2cc:主剤2.0cc:シンナー0.2ccが標準となります。(2020年7月27日記載修正)
2)上塗り1回目と2回目:
筆をウキに対して直角に向け、回転させながら肩の絞り部分を横方向へ塗ります。この時、なるべくトップにはみ出ないようにします。
肩がぬれたら、肩から足先まで縦方向に塗ります。手早く丁寧に行います。また、この時、筆ムラを防ぐために、筆の返しはせず、一方向にのみ塗ります。
乾燥台で乾かします。
丸1日乾燥台で乾燥させます。この時、ホコリが付着しないよう注意を払うことが必要です。
私は、食器用の水屋を改造して、この中に乾燥台をおいて乾燥させています。
乾燥後、2000番の紙ヤスリで表面を整えます。上塗り1回目はほとんど研ぎません。
なぜなら、上塗り1回目できつく研いでしまいますと、化粧塗りや銘がはげてしまうことがあります。
こうなると、修正が大へんですので、ほとんど研がず、極端な凹凸部分のみ、軽く研ぎます。
2回目は普通どおり研ぎますが、研ぐ場合には、大きな洗面器か、洗面台に水を張って行います。
3)上塗り3回目:
上記2)上塗り1回目と2回目と同じ要領で、3回目の上塗りを行います。
塗装後、2000番の紙ヤスリで仕上げます。
*ポイント:
上塗り3回目以降の全ての塗りに言えることですが、3回目以降はかなりシンナーで薄くといた塗料を塗り重ねていきます。
薄く、軽く塗るのがコツですが、なかなか最初からは上手にはいきません。軽くしすぎて、筆にとる塗料の量が少なすぎますと、かすれてしまいますし、筆にとる塗料の量が多すぎますと、特定の部分に塗料がたまる原因になります。
塗料が特定部分にたまる原因は、ボディの凹凸が解消されていないことも原因のひとつです。成型や下塗りは勿論、素材選びの重要性がここでも生じてきます。
4)上塗り4回目:
上記3)上塗り3回目と同じ要領で、4回目の上塗りを行います。
塗装後、2000番の紙ヤスリで仕上げます。
5)上塗り5回目(最終):
上記4)上塗り4回目と同じ要領で、5回目の上塗りを行います。
以上
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