2枚合わせウキはヘラウキ作りの最も基本となるものです。
2枚合わせの技法をマスターすれば、カヤウキや1本取りはこの応用となります。
また、2枚合わせは、孔雀の羽根を表面を合わせることから、美的にも優れたものを作ることが可能です。
一般的に2枚合わせは、1本取りウキよりも多く接着剤を使用することから、感度が鈍いと言われていますが、尽心作 匠では、製作ポリシーにも述べているように、ほとんど接着剤を使用せづ、極薄い塗りを塗り重ねることにより、強度と平滑性を実現しています。これにより、2枚合わせでも、1本取りに負けない動きを演出します。
1)羽根の2つ割り:
自作工具である2つ割り台を使用して、側線沿いに羽根を2つに割ります。
写真にあるように、指で固定し、左右からカミソリを入れます。
慣れないうちは、深く切り込んで失敗することが多いので、慎重に側線沿いにカットしていきます。
2)合わせ目の調整:
自作工具である物差しに240番の紙ヤスリを貼った物を使って、2辺の羽根を紙ヤスリで削ります。この時、一度に多量に削るのではなく、少し削ったら合わせてみて、合わせ目を調整します。
自作工具である物差しに240番の紙ヤスリを貼るのは滑り止めのためです。
削る際には、定規と羽根を両方持って削ります。下に敷いた紙ヤスリで削ります。
この場合、羽根の3分の2程度しか削れませんので、上下を逆にしながら均一になるよう削っていきます。
最初は、どうしても先端部が余計に削れると思いますが、力の加減を工夫しながら削っていきます。
定規を使うことにより、2つの羽根の高さを同じ高さに削ることができます。
ただし、ボディ100mm以上の場合には、テーパーをつけた部分よりも、テーパーなしの部分が痩せてしまうことがありますので、直径の真半分よりも0.3mm程度肉厚に仕上げます。
小ウキの場合には、必要ありませんが、チョーチン用、底釣り用には、このアドリブが必要です。
また、この時、羽根の白い粉が多量にでるので、掃除機を横において、吸い込みながら作業をします。
マスクをして、できるだけ、削りカスである白い粉を吸わないようします。
合わせ目がきっちり合うよう、また、真円になるように、削っては合わせを繰り返します。
3)足部分の成形:
マーカーで印をいれたほうが足部分になりますので、作品紹介にある「仕様書」の寸法に基づき、鉛筆でマークを入れます。
指定された寸法位置から、カミソリでカットします。この時、一度に多量にカットしないように慎重にカットしていきます。
カミソリでのカットに頼らず、240番の紙ヤスリでの加工に重点をおくほうが、作業時間はかかりますが、きれいに仕上がります。
左右均等に、かつ、きれいなテーパーを描くように、240番の紙ヤスリを使って成形します。
この時も、羽根の白い粉が大量に出るので、掃除機を横において、吸い込みながら作業をします。
また、マスクをして、できるだけ、削りカスである白い粉を吸わないようします。
中綿はこのようにオニギリ形に成形します。
また、形が決まったら、仮巻きをする前に、軽く山の部分を指でおしつぶします。押しつぶすことなく、仮巻きすると、仮巻きにより、つぶれるため、いびつなつぶれ形となり、センターが出しにくくなるからです。
3−2)足部分の成形:
羽根をカットする際に、精度の向上、成形時間の短縮を目的として、泉舟工房さんから発売されている「エポキシ成形器」を使用しています。
型に羽根をセットして、カッターで所定の寸法までカットしていきます。精度が非常に高い治具ですので、均一にウキをカットすることができます。
コツは羽根をセットするときに、ねじれないようにすることです。
私の場合は、7割程度をこれで仕上げ、最終調整を紙ヤスリで行っています。
詳細につきましては、泉舟工房さんへ、連絡先は、こちら に掲載しています。
4)足部分の仮巻き:
ミシン糸(黒:50番手)を使用して、足部分の仮巻きをします。
糸は中央から、足部先端に向かって、中綿を指でなじませながら巻いていきます。黒いミシン糸を使用するのは、全体の形が把握しやすいからです。
この仮巻きと紙ヤスリによる成形を繰り返して、テーパーをつけ、また羽根を真円していきます。
1回目は6割ぐらいでなじませる感じで巻き、しばらく置いて、中綿をなじませたら、2回目、3回目で形を決めていきます。
確認点は、合わせ目がぴったりと合っているか、センターがでているか、左右対称になっているか、真円になっているかで、少しでもおかしいと思ったら、ペーパーで形を修正し、何度も仮巻きを行います。
ウキ作りでは、この確認、修正がとても大切です。しっかり確認するのが、きれいに作るための最大のコツかもしれません。
4−2)足部分の仮巻き:
足部分のくせづけをする際に、精度の向上、成形時間の短縮を目的として、泉舟工房さんから発売されている「エポキシ絞り成形器」を使用しています。
カットが終了した羽根をこの絞り成形器に押し込み、紙ヤスリでの成形を繰り返し、最終的に形を整えていきます。
これにより、均一にウキを成形することができます。
成形が完了したら、絞りの部分のみ水をつけ、さっと振って水を切ります。「エポキシ絞り成形器」の中に羽根を押し込み、24時間程度自然乾燥させれば、絞り成形器の形にくせづけすることができます。
水で馴染ませることから、失敗がありません。
これで、足部分の成形作業が終了です。
写真は、左上部から、40mm、45mm、50mmの羽根です。
5)頭部四つ割り:
マーカーで印をいれないほうが頭部分になりますので、作品紹介にある「仕様書」にある寸法に基づき、鉛筆でマークを入れます。
ただし、頭部分の四つ割りの中央部分に鉛筆の粉が入ってしまうと、消すことができません。
これは仕上がりに大きな影響を残しますので、鉛筆での寸法入れは中央部分にはしないようにします。
頭部分にマーカーで印をいれなないのも、黒い削りカスが中央部分に入らないようにするためです。
寸法に基づき、カミソリで四つ割りします。この四つ割りが正確にできないと、センターがでませんので、慎重に作業をします。
泉舟工房から発売されている「四つ割り台」を使用すると、この作業が楽に正確にできます。
また、上の画像にありますように、「四つ割り台」のセンター(カミソリが入る部分)と、脚側のセンターが一致するようにします。
正確なセンター出しは、このように1つ1つの正確な作業から生まれてきます。
6)頭部成形:
四つ割りが終了したら、カミソリでカットしていきます。この時、一度に多量にカットしないように慎重にカットしていきます。
紙ヤスリをこのようにはさんでもちます。このアール(紙ヤスリのかたむき具合)がウキの肩部分のアールになります。この加減は体で覚えて下さい。
先程のアール(紙ヤスリのかたむき具合)になるように、削っていきます。
左右均等に、かつ、きれいなで滑らかなテーパーを描くように、240番の紙ヤスリを使って成形します。
この時も、羽根の白い粉が出るので、掃除機を横において、吸い込みながら作業をします。
また、マスクをして、できるだけ、削りカスである白い粉を吸わないようします。
頭部の先端径について、装着するトップの径より、@少し太めに成形し、A仮巻き、Bその後、トップを実際にボディにのせてみて、ピタリとあう太さまで、仮巻きと仕上げ削りを繰り返して、合わせていきます。
グラスソリッドの場合には、ボディの方が太めに仕上がります。この場合は、瞬間接着剤でもりあげ、塗装段階で削ってあわせていきます。
逆に、PCムクの方は仮巻き段階でピタリとあっていても、装着した場合には、トップの方が太く、口があく場合もあります。
このあたりは、やはり経験と慣れが必要かと思います。
色紙の黒を写真のように使用して、左右が対称になっているか、チェックしながら削っていきます。削り終えたら、寸法を出すためにマークした鉛筆の線をきれいに消します。
ウキ作りでは素材を汚さないということが、とても大切です。このため、手元には、濡れ雑巾を置いておく、掃除機をまめにかけるということが、とても大切です。
7)頭部の仮巻き:
ミシン糸(黒:50番手)を使用して、頭部分の仮巻きをします。
黒いミシン糸を使用するのは、形が把握しやすいからです。
頭部分は糸が滑りやすいので、120番の紙ヤスリで軽く傷をつけたり、糸を唾液で湿らせたりして、滑らないようにします。
先にいくほで、間隔をつめて、細かく巻いていきます。
足部分と同じように、この仮巻きと240番の紙ヤスリによる成形を繰り返して、テーパーをつけていきます。
これは追加の画像です。80mmの羽根です。
7−2)頭部の仮巻き:
頭部のくせづけをする際に、精度の向上、成形時間の短縮を目的として、泉舟工房さんから発売されている「金属成形器」を使用しています。
頭部カットが終了した羽根をこの金属成形器に軽く押し込み、くせづけを行います。熱源は小型のホットプレート(220W)です。
足部の成形はエポキシ絞り成形器のテーパーが基準になりますが、頭部の成形は自分の目が基準になります。
従って、金属成形器による頭部のくせづけはあくまで軽くくせづけするのみで、最終的に糸による仮巻きで形を決めます。
8)足部分くせづけ:
足素材と羽根ボディを接着するために、ボディの中に入る足素材の尖らせた部分を羽根に押し付けます。
押し付けた部分が、軽くへこんでいますので、その部分を千枚通しを使って、型をつけます。
足部分の足素材に接する中綿を丸棒ヤスリで削り薄皮にし、印籠継ぎが目立たないようにします。
9)頭部くせづけ:
ソリッドアダプタと羽根ボディを接着するために、ボディの中に入るソリッドアダプタの尖らせた部分を羽根に押し付けます。
この時は軽く溝をつけるのがこつです。きつく溝をつけると、ソリッドアダプタがボディに密着せず、センターがでません。
10)全体の仮巻き:
ミシン糸(白:50番手)を使用して、全体の仮巻きをします。
白いミシン糸を使用するのは、成形が完了し、これでOKとなった場合、この糸の上から、瞬間接着剤をつけるからです。黒い糸を使用しますと、糸クズがボディに残ってしまいます。白い糸なら、それ程、目立ちません。
頭部分は糸が滑りやすいので、再度紙ヤスリで軽く傷をつけたり、糸の湿らせたりして滑ならないようにします。先に行く程、間隔をつめて、細かく巻いていきます。
巻く場合には、中央→頭部→中央→足部→中央の順で仮巻きし、マスキングテープで止めます。
足部分や頭部分と同じように、この仮巻きと紙ヤスリによる微調整を繰り返して、成形を完成させます。
全体を仮巻きしたら、ウキを回しながら、頭部、足部の両方から見て、センターがでているかチェックします。
センターが出るように足素材を回転させたり、指で押さえて曲がりを修正していきます。
それでもセンターが出ない場合には、仮巻きをほどいて、最初からやり直します。
ワンポイントアドバイス
センター出しについては、現在も悩みを抱えております。やはり、羽根はなかなか言うことを聞いてくれません。
私なりのやり方ですが、ご紹介させていただきます。
1.羽根の成形の段階で、必ず左右対称になるよう削っていきます。そうは言っても、羽根は真円ではありませんので、一定のアドリブが必要です。
2.中綿についても、必ず均等になるよう、慎重に紙ヤスリで削ります。削りすぎると、強度の低下、真円にならないという問題が発生します。
3.足を羽根に入れて糸を巻込むとき、言葉ではいいにくいのですが、 足に指を添えて真っ直ぐになるように巻き込みます。
4.トップをとりつけるソリッドアダプタは、足を巻き込んだ後、センターを見ながら差し込みます。頭側の中綿をつぶす量はごくわずかにし、センターを見ながら、必要があれば、精密丸やすりで頭側のソリッドアダプタが通る芯部分を削ります。削りすぎると、かえってセンターがでません。
それでも、2枚合わせでは、2枚の羽根の硬度が違う、1本取りでは表裏の硬度が違いますので、接着後や、塗装工程で曲がりが生じてきます。
11)足素材接着:
木工用ボンドを薄めて、注射器で注入できる程度の濃度した物を注射器に移します。
木工用ボンドは原液1:水2程度の割合になります。
仮巻きしたボディから、足素材を抜き、注射器で薄く溶いた木工用ボンドを注入します。
注入後、再度、足素材をボディに入れます。
足素材を装着後、再度センターがでているかどうか、確認します。
12)ソリッドアダプタ接着:
頭部も足部と同様に、ソリッドアダプタを抜き取り、注射器で薄く溶いた木工用ボンドを注入します。
ただし、注射器の針は、1mm径なので、0.8mm径のソリッドを使用する場合には、アダプタに薄く溶いた木工用ボンドを塗ります。
その後、再度、ソリッドアダプタをボディに入れます。ただ、注射器で木工用ボンドを注入するほうが、強度はアップしますので、この手法をお奨めいたします。
ソリッドアダプタを装着後、再度センターがでているかどうか、確認します。
接着の完成です。
写真は、ボディの直径5.5mm、長さ50mm、45mm、40mm、足の直径1.0mm、長さ70mmにPCムクを装着した、Type D2です。
13)全体の接着:
2枚合わせの合わせ目、頭部4つ割り部分に瞬間接着剤を塗り、接着します。
14)削り出し:
接着したら、すぐに巻いてある糸をはずし、しばらく乾燥させます。この時、合わせ目が開いていないことを確認します。もし開いていた場合には、再度仮巻きし、接着します。
接着後、240番の紙ヤスリで余分な瞬間接着剤を取り除きます。
これは、成形するのではなく、あくまで余分な瞬間接着剤を取り除くために行います。
成形しようとして、削りすぎると、中綿が出てしまい、強度が低下してしまいますので、十分注意して下さい。
15)ボディと足素材の段差消し:
回転機に再度ボディを固定し、回転させながら、ボディと足素材の段差消すための削りを行います。
ボディと同様、回転させて削った際のキズは塗装をすると目立ちますので、紙ヤスリで縦に仕上げ削りを行います。
16)トップ素材の切断:
作品紹介にある「仕様書」に基づき、トップ素材に鉛筆でカット位置を入れます。
鉛筆の目印に基づき、カミソリでカットします。
目印にそって、カミソリでまわしながらきります。グラスソリッドの場合のみ、デザインナイフで切断します。まわしながら切るのがポイントです。これは変形を防ぐためです。
カット面が平滑に、かつ、真っ直ぐになるよう、紙ヤスリで成形します。
切断面を紙ヤスリの240番を使って、平らにします。この作業を怠ると、トップの付け根とボディとの間にすきまが発生します。
トップには、@PCパイプ、APCムク、Bグラスソリイドムクの3種類がありますが、パイプの場合は先端が加工されてつまっていますので、根元側を切断します。PCムクの場合には素材の段階でテーパーがついていますので、好みのテーパーを出すために、先端側を切る場合もありますし、根元側を切る場合もあります。
17)トップ素材の接着:
ソリッドアダプタを仕様書に基づき、回転させながらカットします。
カットしたソリッドアダプタの先端を 紙ヤスリで丸めます。
ボディとトップをソリッドアダプタを介して、接着します。まず、仮にトップをソリッドアダプタに装着してみます。
根元まで入らない場合には、注意深く、ソリッドアダプタを回転させながら、紙ヤスリで削っていきます。
根元までしっかり正確に入ったら、センターが出ているかどうか、確認します。
トップ素材を抜き取り、ソリッドアダプタに瞬間接着剤を塗り、再度トップを差込ます。瞬間接着剤はすぐに固まりますので、すばやく入れることが大切です。
*トップとボディの接合部分は段ができます。これをきれいに仕上げるためには、@トップの根元とボディの接合部分の径をきっちりとあわせること、これは自分の目が頼りです。A先程のトップの切断面を平らにすること、B同じく、ボディ側のトップとの接合面も平らにすること 以上、3点の作業を正確に行うことです。
*もし、段が発生した場合には、瞬間接着剤を極少量垂らして、盛り上げることにより、段を消します。その後、紙ヤスリで微調整を行います。
ワンポイントアドバイス
以上の削り出しで、切ったり、削ったりという工程が終わりになります。
塗装の工程で、塗装によって盛り上げたり、塗装のペーパーがけの段階で成形を行うということは、厚塗りによって浮力を損なったり、塗装のペーパーのかけ過ぎによるトラブル発生のもととなります。
あくまで、羽根とカーボンとの段を消すといった成形作業は、この段階で全て終えるという気持ちで行ってください。
18)2枚合わせウキ原形の完成:
これで、2枚合わせウキの原形の完成です。
以上
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